改訂・フリッツ・ラング内側からの切り返し表。題名にはYouTubeで検索しやすいように原題を書いておきます。数字はすべておおよそです。
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邦題/原題/封切日 |
正面表(人物が映画内でキャメラを正面から見据えたショットの数 |
ショット数 左から→ 1ショットの平均秒数(④×60÷③) 1時間の平均ショット数(60秒×60分=3600÷①) 総ショット数 (④÷60分×②) 上映時間 あらすじ 内側からの切り返しによる分断。『正常な同一画面』と同一画面は殆ど同義。 視覚的細部 |
内側からの切り返し・外側からの切り返し・クローズアップの数 ●内側からの切り返しについてのコメント ■外側からの切り返しについてのコメント。「視点転換」とは古典的デクパージュとは無関係な切り返し。 ★クローズアップについてのコメント。 |
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1919 | 蜘蛛/第一部:黄金の湖 THE SPIDERS Episode One The Golden Sea 封切 1919年10月3日 |
16。クローズアップ等ではっきり正面を見ているのは5 ①オープニングは男がキャメラを正面から見据えているクローズアップから始まる。 ②冒険家の回想を聞いた女スパイがクローズアップでキャメラを正面から見据えている。 ③その後、冒険家の手紙を奪い取ろうとした女スパイがバスト・ショットでキャメラを正面から見据えている。 ④冒険家が蜘蛛をデスクに置いて右手を握シりしめ『決めた』と言う時のフルショット(ウエスト・ショット)でキャメラを正面から見据えている。 ⑤インカの王のひざ元へひざまずいているインカの女がフルショットでキャメラを正面から見据えている。 |
6.7 534 605 68 スパイ映画。『蜘蛛』と呼ばれるギャング団のリーターの女リオ=シャー(レッセル・オルラ)とアメリカ人冒険家カイ・フーク(カール・ド・フォークト)とが失われた財宝をめぐり戦いを繰り広げる冒険スパイ映画。 『分断』19箇所 ①壺を海へ投げようとしている男と弓で彼を射るインディアンとのあいだは、7ショット内側から切り返されそのまま終わっている。 ②会議をしている男たちと、それをマジックミラーで覗き見している女スパイ(レッセル・オルラ)とのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。主観ショット。 ③鉄道の通信士とバナナを食べている黒人のボーイとのあいだは、4ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。■場所的関係がわかりにくい(エスタブリッシング・ショットの不在)。 ④酒場のカウンターで酒を飲んでいる冒険家(カール・ド・フォークト)とテーブルで男と話している女スパイとのあいだは、4ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。 ⑤その後、酒場の外から射撃している2人組とそれを窓から見ている冒険家とのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。『窓空間』。■速くて見えない。 ⑥気球と馬で逃げてくる冒険家とのあいだは、2ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。さらに馬で追って来る敵たちへと俯瞰から切り返されている。 ⑦地上の遺跡とそれを気球の中から望遠鏡で見ている男とのあいだは、3ショット内側から切り返されそのまま終わっている。望遠鏡アイリスの主観ショット。 ⑧さらにその後、同じように2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。望遠鏡アイリスの主観ショット。 ⑨池に入ってゆくインカの女(リル・ダーゴヴァー)と彼女を襲う蛇、沼地からそれを見ている冒険家とのあいだは、5ショット程度内側から切り返されている。■場所的関係が不明確(エスタブリッシング・ショットの不在)。 ⑩インカの王に囚われている女スパイとそれを壁の穴から見ている冒険家とのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。主観ショットかも知れないが正面から撮られている(『原初的主観ショット』)。 ⑪水面に弾ける滝の水とそれを見ている2人(冒険家とインカの女)とのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。主観ショット。 ⑫スパイの女がいざ生贄にされるかという時、インカの王と縛られているスパイの女とのあいだは、1ショット内側から切り返されている。 ⑬銃撃戦が始まり、格闘している2人(インディアンと男)と柱の陰からそのインディアンを銃撃する男とのあいだは、1ショット内側から切り返されそのまま終わっている。 ⑭爆発する松明(?)とそれを見ている女スパイとのあいだは、4ショットほど内側から切り返されそのまま終わっている。■主観ショットの視線が緩い。 ⑮いかだの上で服を振って助けを求める2人(冒険家とインカの女)とそれを船から見ている船員たちとのあいだは、3ショット内側から切り返されそのまま終わっている。 ⑯その直後、いかだの2人とそれを望遠鏡で見ている船員とのあいだは、合わせて3ショット内側から切り返されそのまま終わっている。望遠鏡アイリスの主観ショット。 ⑰部屋に入って来た女スパイと彼女を迎える冒険家とのあいだは、4ショット目に外側から切り返されて同一画面に収められるまで内側から切り返されている。■スカーフを下げて顔を見せる時の女スパイは正面から「そのひと」というショットで撮られ、冒険家は斜めから平凡に撮られている。 ⑱その後、階段を降りてきたインカの女とそれを見ている女スパイとのあいだは、1ショット内側から切り返されている。■縦の構図のパンフォーカスで手前の2人と奥のインカの女が同一画面に収められたあと、インカの女→女スパイと高速で切り返されている。 ⑲冒険家に肩を抱かれて部屋を出て行くインカの女とそれを見ている女スパイとのあいだは、1ショット内側から切り返されそのまま終わっている。 ■評 ショットの場所的関係が緩く「これはいったい?」というショットが多く撮られている。『分断』は⑲箇所程度されてはいるが「その人」を「そのひと」として撮られた『分断』は『分断』⑱⑲くらいしかなく、むしろその直前にたばこを吹かしている女スパイレッセル・オルラへ一瞬寄ったクローズアップなどが大きくずれている。全般としても冒険家よりも女スパイのショットがずれている。 ■カッティング・イン・アクション 重複は少ない。 ■ディゾルヴ あり ■アイリス 基本的には使われていない。 ■アイリス・アウト ■ハイ・コントラスト ■エスタブリッシング・ショットの不在 『分断』⑨などは同時期のドライヤーと比べて「拙さ」によるエスタブリッシング・ショットの不在のように見える。 ■太目 女スパイはやや太目。 ■逆手 黄金を見つけた後の仲間割れで男がナイフを逆手に握っている。 ■被写界深度 パンフォーカス ①鉄道の展望室、客室で実際の過ぎ行く景色とレールを深い被写界深度で捉えている。 ②25分過ぎ、酒場の窓の外の冒険家と中のテーブルで男と話している女スパイとがパンフォーカスで同一画面に収められている。このパンフォーカスは奇形的でまさに「パンフォーカス」として撮られている。 ③『分断』⑱参照。 ■起源 なし ■回想 主人公がパーティでこれまでの経緯を話す→ボートで海を漂う壺を発見、仲からインカ文明の遺跡を発見したとの手紙。 |
55-3-23-多用(極めて多い) ●内側からの切り返し 同一空間における内側からの切り返しよりも異空間における平行モンタージュによる空間拡大が主とされている。切り返しは空間の構成が不十分で計測しづらい。 ■外側からの切り返し 『分断』⑰。真後ろからの切り返し。 ▲平行モンタージュ 多用(極めて多い) パンフォーカス 奇形的あり。 |
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1919 | ハラキリ HARAKIRI 12月18日 |
9ショットくらす。遠景でちらちらと見ているのが多い。クローズアップではっきり見ているのは以下 ①リル・ダーゴヴァーの出のショット。アイリスに囲まれたクローズアップでキャメラを正面から見据えている。 ②『分断』⑦参照 ③祭りの客たちの見守る中を屋敷の中から出て来て父親の死を告げたオタケさんのクローズアップで。 |
12 294 422 86 ヨーロッパから帰国した大名のトクヤワ(パウル・ビーンスフェルト)を出迎えた大名の娘のオタケさん(リル・ダーゴヴァー)はヨーロッパの土産物に大喜びするがそれを見た高僧(ゲオルク・ヨーン)はトクヤワは異国の地で仏陀への信仰を失ったと激怒する。決まりによってもうじきオタケは「聖なる森」の巫女とならなければならないが強制はできないというトクヤワと、かねてから高僧の自分に対する不純な意図を見抜いていたオタケは高僧との関係を悪化させてゆく。ある時オタケは宝物の人形を仏陀に捧げようするが堕落した行為だと高僧に人形を投げ棄てられ、そんなこともあって高僧は、トクヤワは異国で仏陀を裏切る信仰を身につけたとミカドに中傷する。3週間後、港に停泊している船の海軍将校(ニールス・ブリーン)は落ち葉祭りで着飾ったオタケを遠くから見て魅了される。その祝いの席でトクヤワはミカドの使者から切腹を命じられ、オタケは祭りの客たちに父親の死を告げる。その場でオタケは巫女になるべく高僧によって「聖なる森」へ連れて行かれ、そこへ禁制を破って侵入してきた海軍将校と打ち解けるが、それを見ていた警備員(ルードルフ・ルッティンガー)に密告されて岩の牢獄に閉じ込められる。だがオタケを芸者にして儲けようとする警備員によってオタケは連れ出されヨシワラに売り飛ばされる。偶然そこにやって来た海軍将校はヨシワラの掟である『999日間日本的結婚をすること』を条件にオタケと結婚し丘の上の茶屋を間借りして新居を設けて束の間の幸せなひとときを過ごすがしばらくして夫は再会を約束して舩で妻と子供のいるヨーロッパへ帰ってしまう。数年後、オタケは生まれた息子(ローニ・ネスト)と共に夫の帰りを待ち続けているが、オタケは離縁されたものとしてヨシワラに戻らねばならないという話を盗み聞いたこの地を治める貴族のマタハリ公(マインハルト・マウル)は彼女の美しさに魅入られ家主(エルナー・ヒュプシュ)に茶屋の家賃を払えず追い出されようとしているオタケを助けたあと金を工面しようとして断られるが諦められず結婚を申し込むものの自分は未だ夫のある身と頑なに拒絶されその結婚は既に失効していると諭しても受け容れられずオタケは子供を抱いて海を見つめひたすら夫の帰りを待ち続ける。そこへ夫を乗せた船が港に停泊するのを見たオタケは部屋の中を花で飾りたて息子と女中のハナケ(ケーテ・キュスター)とともに夫の帰りを夜通し待ち続ける。 『分断』11箇所。 ①鐘を鳴らす大名トクヤワ(パウル・ビーンスフェルト)と襖を開けて入って来る家来とのあいだは、2ショット目に同一画面に収められるまで1ショット内側から切り返されている。 ②日本間で話している2人(大名と高僧ゲオルク・ヨーン)とやって来て障子の影からそれを見ているオタケさん(大名の娘リル・ダーゴヴァー)とのあいだは、2ショット目に同一画面に収められるまで1ショット内側から切り返されている。 ③人形とそれを見ているオタケさんとのあいだは、2ショット目に同一画面に収められるまで1ショット内側から切り返されている。主観ショット。 ④庭園で小舟に乗ってい人々とそれを見ている将校(ニールス・ブリーン)とのあいだは、1ショット内側から切り返されそのまま終わっている。主観ショット。■その次のお辞儀をしているリル・ダーゴヴァーのバストショットが位置関係からしてどのようなショットなのかよくわからない(エスタブリッシング・ショットの不在)。 ⑤花に留まっているトンボとそれを見ている人々とのあいだは、2ショット目に同一画面に収められるまで1ショット内側から切り返されている。主観ショット。 ⑥トクヤワと彼に切腹を言い渡したミカドの使者とのあいだは、同一画面に挟まれた1ショット内側から切り返されている。■フルショットとのずれが大きい ⑦庭園を歩いているオタケとそれを見ている高僧とのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。主観ショット。■場所的関係が分からないので切り返しなのか不明(エスタブリッシング・ショットの不在)。高僧はキャメラを正面から見据えている。 ⑧庭園で話している坊主たちとそれを見ているオタケさんとのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。主観ショット。■エスタブリッシング・ショットが撮られないので今一つ不明。 ⑨聖なる森の入り口とそれを指さしている2人(オタケさんと将校)とのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。主観ショット。 ⑩オタケさんを岩の中に閉じ込めた坊主とそれを見ている警備員(ルードルフ・ルッティンガー)とのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。主観ショット。 ⑪立って話している2人(高僧と警備員)とそれを草むらに隠れて見ている貴族マタハリ(マインハルト・マウル)とのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。主観ショット。■場所的不明確性から確定はできない(エスタブリッシング・ショットの不在)。 ⑫帰港した船と息子を抱きながらそれを見ているオタケさんとのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。主観ショットだが角度が違う。 ■評 オタケという異国の女の一途なひとときを逃げることなく真正面から撮っている。五回見たがフリッツ・ラングのこの映画に賭ける真摯な姿勢は驚くしかない。 ■撮り方 おそらく切り返しはもう少しあるだろうが場所的関係が不明なものはカウントしていない。どちらにしても「死滅の谷(DER MUDE TOD)」(1921)以降のラングに比べて切り返しは極めて少ない。切り返しで映画を撮る傾向は希薄だが少ないながらも切り返しは基本的に『分断』されている。ショットの基本はフルショット、そこに寄りのショットで照明等を修正し「その人」を「そのひと」として撮ることを反復させている。引きのショットと寄りのショットで時空のずれが生じる。平行モンタージュが極めて多い ■『見ざる、聞かざる、言わざる』 父の遺品である『見ざる、聞かざる、言わざる』を表したものをオタケが夫に見せる時、日本の映画館では笑いが起きる。 ■エスタブリッシング・ショットが撮られていない。『分断』④の直後のオタケさんのバスト・ショットが果たして将校の主観ショットなのか否か、場所的関係が不明確ゆえに切り返しなのかそうでないのか特定できない。『分断』⑩の直前、大仏にお参りしているマタハリから2人(高僧と警備員)へと3ショット切り返されているように見えるがその後のショットを見ると両者の空間は通じていないらしく、これもまた場所的不明確性として現れている。例えばドライヤー「牧師の未亡人(Prästänkan)」(1920.10.4)の最初の牧師の候補者たちによる説教のシーンにはエスタブリッシング・ショットが撮られていないがそれはあくまで教会の限られた空間の中でのエスタブリッシング・ショットの不在であり境界を欠いた不確定の切り返しではない。この時期のラングは切り返しに関して未だ「拙さ」を見せている。 ■軸 動かない。パンはあり。 ■カッティング・イン・アクション 重複は少ない。寄る・引く。 ■フェイドアウト あり ■アイリス 常時ではない。ここという時に入る。アイリス・イン、アウトあり。 ■ディゾルヴ あり ■ハイ・コントラスト アメリカの夜も。ローキイ気味。 ■キャメラの横を通り過ぎる。 ■起源 なし ■回想 なし ■罪の意識 なし。将校にあり。 ■「常習性」 強い。 |
19-0-8-多用(極めて多い) ●内側からの切り返し 同一空間における内側からの切り返しよりも異空間における平行モンタージュによる空間拡大が主とされている。切り返しは空間の構成が不十分で計測しづらい。 ▲平行モンタージュ 多用されている。 ★クローズアップ 1ショットだけでも別々に撮られているショットが多い。 |
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1920 | 蜘蛛/第二部:ダイヤの船THE SPIDERS Episode Two The Diamond Ship 2月2日 |
15ショットくらい。クローズアップではっきり見ているのは以下 ①インドで財宝のありかを催眠術で占っている時。 ②『分断』⑩ ③縛られ煙に包まれた冒険家が |
8.6 419 720
103分 スパイ映画。 『分断』17箇所。 ①地上の光景と飛行機の中の冒険家カイ・フーク(カール・デ・フォークト)とのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。別々に撮られている。■主観ショットかも知れないがそのようには撮られていない。 ②チャイナタウンのアジトの壁に掛けられている札とそれを見ている冒険家とのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。主観ショット。 ③檻の中の虎とそれを見ている冒険家とのあいだは、4ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。主観ショット。 ④ギャンブルをしている中国人たちとそれを見ている冒険家とのあいだは、4ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。最初は主観ショット。 ⑤その直後、冒険家を案内する中国人と彼に指示を出しているボスとのあいだは、4ショット内側から切り返されそのまま終わっている。 ⑥その直後、二段ベッドで寝ている男たちとそれを見ている冒険家とのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。主観ショット。 ⑦その直後、冒険家と彼にナイフを投げる中国人とのあいだは、1ショット内側から切り返されそのまま終わっている。 ⑧その後、酒場のテーブルでたばこを吸っている男とその横でパイプを吹かしている船長とのあいだは、同一画面に挟まれた1ショット内側から切り返されている。■照明が修正されている。 ⑨パイプを吸っているダイヤモンド王と本を読んでいる彼の娘とのあいだは、2ショット目に同一画面に収められるまで1ショット内側から切り返されている。■ディゾルヴを挟んでそれとなく撮られているがその後の同一画面とは異質の時空が撮られている。 ⑩船の荷物置き場で、覆面をした冒険家と彼を見て驚く黒人のコックとのあいだは、3ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。■どちらもキャメラを正面から見据えている。主観ショット以外で「ずれ」を生じる内側からの切り返しが撮られ始めている。 ⑪机の上の蜘蛛とそれを手に取るダイヤモンド王とのあいだは、1ショット内側から切り返されている。主観ショット。 ⑫部屋の中の2人(冒険家とダイヤモンド王)とそれを鍵穴から盗み見ている召使とのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。■主観ショットだろうが正面から撮られているので所謂『原初的主観ショット』。 ⑬河原の岩肌とそれを見ている冒険家とのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。主観ショット。 ⑭洞窟の中の財宝とそれを見ている冒険家とのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。主観ショット。 ⑮爆発する物体とそれにマッチで火をつける冒険家とのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。主観ショット。 ⑯財宝を見つけた冒険家とそれを見ているバンダナをした男とのあいだは、2ショット目に外側から切り返されて同一画面に収められるまで1ショット内側から切り返されている。 ⑰ソファーで眠っているダイヤモンド王の娘とそれを見ている者たちとのあいだは、1ショット(?)内側から切り返されそのまま終わっている。主観ショット。■誰が見ているのかよくわからない(エスタブリッシング・ショットの不在)。 ■評 主観ショットは正面から撮られたもの、場所的関係が不明確なものが多い。 切り返しは少ないが1ショットだけアイリスで周囲を暗くしたクローズアップが別に撮られているショットが多くある。 ■カッティング・イン・アクション 寄る・引くはあるが大きな重複はしない。 ■ディゾルヴ 多用 ■アイリス 常時ではないが。 ■ローキイ、ハイ・コントラスト気味。 ■太目 女スパイはやや太目。 ■回想 2回。ダイヤモンド王の祖先の海賊が財宝を周りの者たちに見せているシーン。その時、敵はナイフを逆手に握っている。あとう一度回想が入る。 ■起源 なし(前作で恋人のリル・ダーゴヴァーを毒殺されている) ■罪の意識 なし ■「常習性」 強い。 |
35-2-40-多用 ●内側からの切り返し この時期には切り返しが未だ拙く同時代のルビッチ、ドライヤーに著しく劣っている。 ■外側からの切り返し ①72分過ぎ、『古典的デクパージュ的人物配置』が1ショットだけ撮られているがそれが外側から切り返されることはない。『古典的デクパージュ的外側からの切り返し』は内側からの切り返しの延長線上の出来事であるから、未だ内側からの切り返しが確立されていないこの時期のラングの作品に『古典的デクパージュ的外側からの切り返し』が撮られることはない。 ▲平行モンタージュ 多用されている ★クローズアップ アイリスで囲い別々に撮られているのも多い。 |
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1921 | 死滅の谷 DER MUDE TOD 封切 1921.10.6ベルリン |
14。 ①馬車に乗り込んできた死神を見ている恋人たちがフルショットで ②金の一角獣亭で医者が食事をしている時クローズアップで ③町の者たちに何故壁に扉がないか死神が答える時のアイリスで囲まれたクローズアップ。 ④その直後、キャメラが引かれたバスト・ショットで死神が(アイリスなし) ⑤第二の灯火の物語で、使者を殺害した後のルドルフ・クライン=ロッゲが一瞬クローズアップで。 ⑥恋人が仮面をかぶる直前にクローズアップで。 ⑦命をくれてダーゴヴァーに言われて拒絶する薬剤師がクローズアップで。 |
6.5 556 889 96 過去に忘れ去られた小さな町に恋人たち(リル・ダーゴヴァーとワルター・ヤンセン)と死神(ベルンハルト・ゲツケ)を乗せた馬車がやって来る。金の一角獣亭では町の有力者たちが集まり墓地の隣にある墓地拡張用地が見知らぬ男に貸与され高い壁で囲まれてしまった経緯を回想している。そこへ死神と恋人たちを乗せた馬車が到着し、3人はテーブルにつくが娘が猫と戯れている隙に婚約者はいなくなってしまい、探し疲れて死神の大きな壁にたどりついた娘は死者たちの亡霊の中に婚約者を見つけて失神し、通りがかった薬剤師(カール・プラテン)に助けられて介抱され、机に置いてあった本に『愛は死に負けぬほど強い』と書かれているのを見つけた彼女は自殺を思い立ち薬剤師の毒薬を手にした瞬間、気がづくと死神の巨大な壁の前に立っていた。そのまま開かれた入口の階段を登って死神に会うと『愛は死より強い、愛の力であなたに打ち勝ち恋人を蘇らせたいと』と頼み死神は、今、まさに消えようとしている三つの命の灯火のうちひとつでも救えれば恋人の命をそなたに与えようと言い、娘は3つの物語の女主人公となり恋人を救うために過去へと旅立つ。 ★第一の灯火の物語 バグダッドのモスクへカリフの妹ゾベイデ(リル・ダーゴヴァー)に会いにやって来た異教徒の恋人(ワルター・ヤンセン)が兄の兵士たちに追われゾベイデは侍女のアネーシャ(エリカ・ウンルー)を使いに出して若者を宮殿に匿うがカリフの家来の密告によって包囲され兄のカリフ(エドゥアルト・フォン・ヴィンターシュタイン)の命令によって恋人は捕らえられ庭師(死神)によって掘られた墓に生き埋めにされる。第一の灯火は消えた。 ★第二の灯火の物語 ベネツィアのモンナ・フィアメッタ(リル・ダーゴヴァー)は意に添わない婚約者ジロラモ(ルドルフ・クライン=ロッゲ)がその陰謀によって恋人(ワルター・ヤンセン)の命を狙っていると知りジロラモと恋人に別々に手紙を出すが恋人に出したジロラモ暗殺計画の手紙をジロラモに奪われてしまいジロラモは何も知らない恋人に偽の手紙を送って自分のマントと仮面を着せて謝肉祭の仮面舞踏会へ行かせ恋人はジロラモと間違えたフィアメッタの家来のムーア人(死神)によって殺されてしまう。第二の灯火も消えた。 ★第三の灯火の物語 中国最高の魔術師ア・ハイ(パウル・ビーンスフェルト)は皇帝(フザール・パフィ)から私の誕生日に見たこともない魔術を見せて欲しい、もし退屈したらお前の首をはねてやるとの手紙をよこされ、娘チャオ・チェン(リル・ダーゴヴァー)と助手のリヤン(ワルター・ヤンセン)を連れて魔法のじゅうたんで皇帝の城へ行き数々の魔法を披露するが皇帝はお前の娘も気に入ったから譲れと迫り恋人たちは逃げようとしたが捕まり、監禁された娘は魔法の杖を使って逃亡し仏塔を像に変えて監禁されていたリヤンを助けて逃亡するが弓取り(死神)に追われて娘は彫像に、リヤンは虎に変身して身を隠すがリヤンは弓取りに射貫かれ絶命する。第三の灯火も消えた。 ★再び死神の館へ 死神は娘にもう一度チャンスを与える。1時間のうちに、未だ燃え尽きていない命を私の元に持ってくるのだ、どんな短い命であっても代わりの命を持ってくれば恋人はこの世に返すと。 ★薬剤師の家へ 娘は毒薬を飲もうとして薬剤師に止められる。そして事情を説明した娘はふと目の前の薬剤師が老い先短い老人だと思い出し『あなたはもう人生を十分楽しんだしこれから先には何もないわ、お願いです、あなたの残り少ない命をください!』と誠心誠意お願いするが激怒されて家から叩き出され窓から顔を出した薬剤師にもう一度お願いするが鎧戸を占められてシャットアウトされる。気を取り直した娘は可哀想な浮浪者を思い出し、楽になりたいのね、大丈夫、命を下さいとお願いするが激怒される。疲れ果てふらふらと入った病院では運び込まれた若者が死んだという噂をしている老人たちが『若い人が亡くなるなんて、、私たちなんかもう目が覚めない方がいいのに、なかなかお迎えが来てくれなくて、』と話しているのを聞いた娘はこれ幸いと『あなた方の命を下さい、、善行だと思って、』とお願いすると老人たちは一瞬でいなくなる。その老人が落としたローソクがもとで病院が火事になり、その中に赤ん坊が取り残されていることを聞いた娘は『燃え尽きていない命、、』とつぶやき炎の中に飛びこむと助けだした赤ん坊を死神に渡そうとするその時、内からのなにかに突き上げられるように赤ん坊を窓から母親の元に返し、とぼとぼと戻って来て燃え盛る炎の中で死神と向き合い『私の命も奪ってください』と死神を見つめると彼は娘を恋人の亡骸へと連れてゆき体から抜け出した2人の魂は死神に導かれ天国の階段を登ってゆく。 ■『分断』43箇所 ①■馬車に乗っている女とそれを見ている恋人たち(リル・ダーゴヴァーとワルター・ヤンセン)とのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。主観ショット。 ②■籠の中のアヒルとそれを見ている恋人たちとのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。主観ショット。、 ③恋人たちと馬車に乗り込んでくる死神(ベルンハルト・ゲッケ)とのあいだは、恋人たちが身を乗り出して死神を見つめるショットから12ショット内側から切り返されそのまま終わっている。■馬車の中では窮屈になっている。恋人たちは成瀬目線を使っている。 ④金の一角獣亭に入って来た死神とそれをテーブルで見ている町の有力者たちとのあいだは、1ショット内側から切り返されそのまま終わっている。主観ショット。 ⑤酒場で新婚の盃で酒を飲んでいる恋人たちとそれを見ている死神とのあいだは、『正常な同一画面』に挟まれた3ショット内側から切り返されている。■死神の顔に微妙な影が落ち周囲が暗くされて照明が修正されている。 ⑥■そのあいだ、砂時計に変化した盃とそれを見ている恋人たちとのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。主観ショット。 ⑦その後、見つめ合う死神と若者とのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。■斜めからの切り返しだが特に死神の顔に微妙な影が落ち周囲が暗くされて照明が修正されている。 ⑧空になったテーブルと猫を肩に載せながらそれを見ている娘とのあいだは、3ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。主観ショット。 ⑨酒場のテーブルの有力者たちと死神、恋人たちとのあいだは、合わせて4ショット内側から切り返されている。■テーブルのショットは中抜きで撮られているようにも見える。 ⑩その直後、町の有力者たちと彼らに婚約者について尋ねる娘とのあいだは、『正常な同一画面』に挟まれた1ショット内側から切り返されている。■ダーゴヴァーの照明が修正されている。 ⑪娘と死者たちの亡霊とのあいだは、4ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。 ⑫薬剤師の家の椅子に座っている娘と煎じ茶を取りに行った薬剤師とのあいだは、4ショット内側から切り返されそのまま終わっている。■ダーゴヴァーの照明が修正されている。 ⑬ローソクの間で『愛は死より強い』と言う娘と死神とのあいだは、『正常な同一画面』に挟まれた1ショット内側から切り返されている。■死神の照明の方だけ修正されているように見える。 ■第一の灯火の物語 ⑭モスクで顔を隠した恋人たち(リル・ダーゴヴァーとワルター・ヤンセン)とそれを見ている男とのあいだは、3ショット内側から切り返されそのまま終わっている。。 ⑮若者の隠れ家にやって来たゾベイデの侍女と2人を窓から盗み見しているカリフの家来とのあいだは、3ショット内側から切り返されそのまま終わっている。 ⑯屋上でゾベイデと兄カリフとのあいだは、『正常な同一画面』に挟まれた2ショット内側から切り返されている。■斜めからの切り返しで余りずれてはいないが別々に撮られていると見える。 ■第二の灯火の物語 ⑰バルコニーからバラを投げるモンナ・フィアメッタ(リル・ダーゴヴァー)と下でそれを受け取る恋人(ワルター・ヤンセン)とのあいだは、4ショット内側から切り返されそのまま終わっている。■上下の切り返し。 ⑱さらにそこからバルコニーのジロラモ(ルドルフ・クライン=ロッゲ)とフィアメッタと下の若者とのあいだは、合わせて6ショット内側から切り返されそのまま終わっている。■上下の切り返し。 ⑲闘鶏に熱中するムーア人と彼を窓から呼ぶ侍従とのあいだは、4ショット内側から切り返されそのまま終わっている。『窓空間』。 ⑳フィアメッタからの手紙を読んでいるジロラモと使者とのあいだは、3ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。■横から撮られた使者の髪にバックライトが当てられている。 21サーベルで戦う2人(恋人たち)とそれを陰から見ているムーア人とのあいだは、4ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。■あまり上手な切り返しではない。 22その直後、刺されて倒れた恋人と彼を見て驚くフィアメッタとのあいだは、4ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。 ■第三の灯火の物語 23皇帝と空飛ぶじゅうたんとのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。 24小人の軍隊を魔法で出した魔術師とそれを見ている皇帝とのあいだは、8ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。 25皇帝に娘ももらうと言われて驚く娘と魔術師とのあいだは、『正常な同一画面』に挟まれた1ショット内側から切り返されている。 26魔術師と屈強な男たちとのあいだは、1ショット内側から切り返されそのまま終わっている。■こういう場合の切り返しの数え方は難しい。ひとまず魔術師とその他とのあいだ、ということでその他同志が切り返されても切り返しは「1ショット」とする。さらにそこから刀を持った男へ1ショット内側から切り返されている。 27閉じ込められ座って外を見ている娘と入って来た皇帝とのあいだは、2ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。■何の変哲もない切り返しだがダーゴヴァーの照明が修正されている。 28その直後も『正常な同一画面』に収められるまで1ショット内側から切り返されている。■その『正常な同一画面』の直後のダーゴヴァーのクローズアップの方が大きくずれている。 29仏塔の見張りたちと魔法の杖で塔を像に変える娘とのあいだは、3ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。 30馬の追っ手たちとそれを見ている恋人たちとのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。主観ショット。■ずれている。 31皇帝と彼から魔法の馬を使って2人を捕まえてこいと命令される弓取り(死神)とのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。■死神のクローズアップの照明が修正されている(顔面に影が落ちるように修正されている)。 32魔法を使って彫像と虎に化けた恋人たちと、虎を射貫く弓取り(死神)とりあいだは、8ショット内側から切り返されそのまま終わっている。 ■再び薬剤師の家へ 33薬剤師と彼に事情を話す娘とのあいだは、『正常な同一画面』に挟まれた1ショット内側から切り返されている。■2人のクローズアップの照明が修正されている。 34その直後、『正常な同一画面』に収められるまで1ショット内側から切り返されている。 35その直後、薬剤師に『あなたの老い先は短い、その命を私に下さい』とお願いする娘と激怒する薬剤師とのあいだは、『正常な同一画面』に挟まれた2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。■薬剤師はキャメラを正面から見据えたクローズアップで激怒している(■ここは正面から切り返された狭い空間)。2人の照明が修正されている。 36時計とそれを見ている娘とのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。主観ショット。 37浮浪者と彼を見ている娘とのあいだは『正常な同一画面』に収められるまで1ショット内側から切り返されている。■浮浪者の照明が修正されている(大きくずれている)。 38■その直後、『正常な同一画面』に収められるまで2ショット内側から切り返されている。 39病院のテーブルの老人たちと入って来た娘とのあいだは、4ショット目に『正常な同一画面』に収められるまで3ショット内側から切り返されている。■4ショット目は外側からの切り返しのようにも見えるが歩いて画面の中に入ってきて外側の構図が成立しているのでここではカウントしない。この直後に外側からの切り返しが撮られている→外側からの切り返し③参照。 40燃え盛る病院とそれを見ている赤ん坊の母親たちとのあいだは、4ショット内側から切り返されそのまま終わっている。主観ショット。 41病院の外の人々とそこに赤ん坊を吊るし下げる娘とのあいだは、6ショット内側から切り返されそのまま終わっている。『窓空間』。 42赤ん坊を助けた後、燃え盛る館の中で娘と死神とのあいだは、『正常な同一画面』に挟まれた2ショット内側から切り返されている。■2人の照明が修正されている。 43燃え盛る美容院とそこへ手を合わせて祈る者たちとのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。主観ショット。 ■評 初期に比べて「別々に撮る」ことが意識的になされ始めている。終盤、命をくれと言われた薬屋が怒って断るシーンなどにおいてキャメラを正面から見据えたショットによる内側からの切り返しが撮られている。さらにその後、燃え盛る炎の家の中で娘(リル・ダーゴヴァー)が「自分の命はいりません」と死神に話すシーンでは、キャメラはクローズアップでリル・ダーゴヴァーに寄り、さらにそこから死神へと内側から切り返され、もう一度娘のクローズアップへと内側から切り返されている。僅か2ショットの斜めからの内側からの切り返しでありながら、この決定的なシーンにおける切り返しが、修正された照明によって別々に撮られていることにより、青年への愛を貫いた娘と死神とのあいだの初めてのコミュニケーションが画面の連鎖によって成立している。 ■カッティング・イン・アクション 重複は殆どない。 ①金の一角獣亭で公証人が立ち上がってローソクを直す時、「立ち顔」で撮られている。 ■夜 アメリカの夜 ■アイリス・イン、アイリス・アウト あり ■アイリス それなりに使われている。 ■ディゾルヴ あり。 ■オーヴァー・ラップ二重写し 死者たちの亡霊が。 ■ワイプ 画面両脇から狭めるワイプあり。 ■ストップモーションアニメ、合成→第三話。 ■コントラスト ハイ・コントラスト。 ■キャメラの横を通り過ぎる。 あり ■女性は太目 ダーゴヴァーが。 ■ヌード 第二の灯火の物語の冒頭に。 ■表現主義 薬剤師の家の床が歪曲している。 ■逆手 第一話でイスラム教徒たちが。第二話でダーゴヴァーとムーア人が。 第三話でダーゴヴァーが小刀を。 ■起源 なし ■回想 あり。町の有力者たちが、死神が町にやって来て墓地の隣の土地を買ったいきさつについて回想する。 ■罪の意識 死神・あり。神の意志に従ってやっているが辛い呪われた仕事に疲れ果てていると告白。ダーゴヴァーは「改心」したのではない。本来の自分を取り戻し天へ召された。 ■「常習性」 ダーゴヴァーは強い。 |
151-3-63-多用 ●スムーズではないが初期の作品よりも切り返しが多くなってきている。 ■視点転換。 ①死神が馬車を止める時、死神の外側から切り返されている。 ②第三話・皇帝に小人の軍隊の入った箱を進呈する時、ダーゴヴァーの外側から切り返されている。逆からの切り返しに近い。 ③『分断』39のあと、老人たちに命を下さいとお願いするダーゴヴァーの外側から切り返されている。 |
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1922 | ドクトル・マブゼ・第一部 DR. MABUSE, DER SPIELER 4月27日 |
42 はっきりは以下 ①『分断』⑬ ②『分断』⑮ ③ポーカーで負けて1人うなだれている金持ちの息子が ④『分断』⑳ ⑤『分断』24のあと、賭けをしない女が夫の姿を見て驚いてキャメラを正面から見据える ⑥ダンサーがマブゼ博士に『検事に気をつけて』と言う時、バスト・ショットに近いクローズアップで。 ⑦『分断』29でマブゼ博士と検事が何度も。 ダンサーが逮捕された直後、マブゼ博士のアジトで秘書が ⑧『分断』46。真正面ではないかもしれない。 |
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242-5-62-多用 ▲平行モンタージュ 多用されている ■外側からの切り返し すべて視点転換 ①『分断』⑦参照 ②『分断』⑧ ③『分断』36 |
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1922 | ドクトル・マブゼ・第二部:地獄.現代人のゲーム Dr. Mabuse, Der Spider.Zweiter Teil:INFERNO.Ein Spiel von Menschen unserer Zeit 5月26日 |
25ショットほど はっきりは以下 ①序盤シャンパンを飲んでランチキパーティをしているマブゼ博士が一瞬ウエスト・ショットで。 ②『分断』⑩参照。 ③伯爵が剃刀で自殺したと検事に電話をかけている召使が ④『分断』⑭参照 |
8.2 439 826 113 マブゼ博士は伯爵夫人をアジトに監禁し、イカサマポーカーをした伯爵から治療の依頼をされると人と会うことを禁じ検事には伯爵は夫人と共に旅行へ出たことにして伯爵夫人の誘拐を事件にしないよう画策し、女囚監獄に収監されているダンサーが検事に自白しそうになると看守を買収して毒薬を差入れて自殺させ、検事室を爆破し逮捕され自白しそうになっている男は群衆を扇動して爆破犯を護送する車に群がらせた隙にスナイパーによって射殺させ、さらに家に閉じ込められ精神を病みつつある伯爵には夫人はもうあなたを見放したと嘘をつき自殺へと追い込む。マブゼ博士への追求を始めた検事は彼の屋敷を訪れるが不在で事務所に帰ったところ大胆にもオフィスで彼を待ち受けていた博士に霊能者の講演に招待されそこで催眠術をかけられ車の事故を装い殺されそうになるが追いかけてきた仲間に助けられいよいよマブゼ博士が黒幕だと悟った検事はアジトに立て籠もる博士一味を警官隊で取り囲む。 『分断』23箇所。 ①雨の中立っている伯爵とそれを二階の窓から見ている検事とのあいだは、2ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。主観ショット。■同一画面に収められるまで時間が経過する。 ②逃げようとする伯爵夫人と『そのドアは開かない』と諫めるマブゼとのあいだは、同一画面に挟まれた2ショット内側から切り返されている。■さほどずれてはいないがマブゼの横からのクローズアップの照明が修正されている。 ③偽札を作っている盲人たちをそれを見ているマブゼ博士とのあいだは、2ショット内側から切り返されている。主観ショット。 ④独房で話をしている2人(検事とダンサー)とそれを小窓から見ている看守とのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。■主観ショットではない。 ⑤爆破犯を乗せた護送車の看守と彼を解放しろと叫ぶ群衆とのあいだは、6ショット目に外側から切り返されて同一画面に収められるまで内側から切り返されている。 ⑥その直後、護送車から出て来た爆破犯と彼を二階の窓から狙い撃ちする銃身とのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。 ⑦マブゼ博士が伯爵夫人に一緒に国を出ようと提案するシーンでの2人のあいだは、同一画面に収められたあと2ショット目に伯爵夫人とマブゼ博士の「胴体だけ」が同一画面に収められ(『奇妙な同一画面』)そのまま終わっている。■伯爵夫人のクローズアップがずれている。 ⑧その後、さらに2人のあいだが同一画面に挟まれた1ショット内側から切り返されている。■マブゼ博士の照明が修正されているが横から撮られているこのショットさほどずれてはいない。 ⑨カジノの間のテーブルに就いている伯爵の幻影とそれを見ている伯爵とのあいだは、7ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。主観ショット。■幻影はキャメラの右側を、伯爵はキャメラをほぼ正面から見ているのでイマジナリーラインがずれているようにも見える。 ⑩その後、カードを配る幻影とそれを受け取る伯爵とのあいだは、同一画面に挟まれた2ショット内側から切り返されている。■幻影はキャメラを正面から見据えている。 ⑪アジトの部屋でマブゼ博士が伯爵夫人に夫の死を告げる時の2人のあいだは、同一画面に挟まれた3ショット内側から切り返されている。■それぞれの照明が修正されているがさほどずれてはいない(その直後に入る伯爵夫人のクローズアップの方がずれている)。 ⑫:検事のオフィスのソファーに座っているマブゼ博士とデスクの検事とのあいだは、6ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。■劇的なシーンだがさほどずれていない。 ⑬集団催眠のセミナーにおける壇上のマブゼ博士と観客席とのあいだは、3つの外側からの切り返しによる同一画面を挟んで合わせて数十ショット内側から切り返されている。■ここに来てから急に切り返しが多くなる。 ⑭舞台に上がって来た検事マブゼ博士が催眠術をかけるシーンでの2人のあいだは、途中の検事の回想を除くと最初に2人は『正常な同一画面』に収まっているが、切り返しの最初の「原ショット」と2ショット目で検事と博士の「手だけ」が同一画面に収められ(『奇妙な同一画面』)、9ショット目に『正常な同一画面』に収まるまで内側から切り返されている。■キャメラを正面から見据えるマブゼ博士のクローズアップが2ショット撮られている。 ⑮催眠術をかけられ車で疾走する検事と彼を車で追いかけている検事の仲間たちとのあいだは、10ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。 ⑯その後、街中を警戒している警官たちとアジトから出て来てそれを見ているマブゼ博士の手下とのあいだは、4ショット内側から切り返されそのまま終わっている。主観ショット。 ⑰その後、アジトを取り囲んでいる警官たちと二階の窓からそれを見ているマブゼ博士とのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。主観ショット。 ⑱街角を歩いて来る検事たちと二階の窓から彼らを射撃するマブゼ博士の手下とのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。主観ショット。 ■この後も二階のアジトと下の警官隊とのあいだで10ショットほど切り返されているが場所的関係が明確でないのでカウントはできない(エスタブリッシング・ショットの不在)。 ⑲死者の幻影とそれを見ているマブゼ博士とのあいだは、合わせて8ショット内側から切り返されている。主観ショット。 ⑳その後、盲人たちと彼らに偽札を舞い投げているマブゼ博士とのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。 21その直後、動き出すオブジェとそれを見ているマブゼ博士とのあいだは、2ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。主観ショット。 22アジトに踏み込んできた検事たちと床に座っているマブゼ博士とのあいだは、3ショット目に同一画面に収められるまで内側から切り返されている。 23さらにその様子を見ている(?)盲人たちとのあいだは、2ショット内側から切り返されそのまま終わっている。 ■評 終盤のセミナーから急激に切り返しが多くなる。全体的にそれほどのずれを生じてはいないが『分断』の傾向は有している。 ■カッティング・イン・アクション ■アイリス・イン、アイリス・アウト 多用。アイリスも多用されている。 ■フェイドアウト、フェイドインあり ■ディゾルヴ あり。 ■オーヴァー・ラップ二重写し ①伯爵の幻影が。 ②催眠術かかった検事が車を運転する時、行先の地名が何度もネオンのように車の横を走る。 ③終盤、死者たちの幻影が ■ストップトリック ①セミナーで行進している者たちが消える ②終盤のポーカーで死者たちが消える ■コントラスト 中間くらい ■照明 ダンサーの独房の壁に映っている格子の影が揺れている。 ■軸 動かない。 ■表現主義 伯爵の屋敷のテーブルの椅子、壁の装飾などがそれらしく造られているが基本的には表現主義ではない。 ■立て籠もること 二階のアジトから銃を撃って応戦するショットなどはスタンバーグ「暗黒街(UNDERWORLD)」(1927)、ホークス「暗黒街の顔役(SCARFACE)」(1931)、ヒッチコック「暗殺者の家(THE MAN WHO KNEW TOO MUCH)」(1934)などによって反復されている。 ■地下水道 マブゼ博士はアジトの落とし戸から地下水道を通り第二の落とし戸を開けて偽札づくりのアジトまで逃げている。地下に降りるために床に作られたドアを「落とし戸」というらしい。勉強になる。 ■起源 なし ■回想 ①伯爵がいかさまポーカーをしているシーンが検事に対する回想で想起される。 ②マブゼ博士が検事に催眠術をかける時に第一部での2人のポーカー対決のシーンが想起される。 ■罪の意識 あり。マブゼ博士は死者たちの幻想を見て狂ってしまっている。 ■常習性 最後に弱くなる。 |
160-5-30-多用。 ▲平行モンタージュ 多用 ■外側からの切り返し ①『分断』⑤参照 ②『分断』⑩の直後、伯爵が幻影に向かって燭台を投げる時。 ③『分断』⑬参照。3ショット撮られているが『古典的デクパージュ的人物配置』とは関係ない。 ★クローズアップ バスト・ショットに近いクローズアップも多い。 立て籠もること 地下水道 落とし戸 |